2023.12.25 Monthly Pitch

MonthlyPitch登壇者が占う、2024年のテックトレンド <B向けDXスタートアップ起業家編>

MonthlyPitchでは、2023年のピッチイベントに登壇いただいた起業家7人皆さんに、2024年のトレンド予想をしていただきました。

皆さんそれぞれの専門領域にどのような影響があるのか、世界のスタートアップシーンはどこへ向かうのか。新進気鋭の起業家の皆さんならではの視点を楽しんでいただければ幸いです。

「インテントセールスが企業の成長や人手不足の解消を実現する」Sales Marker 代表取締役CEO 小笠原羽恭氏

── 御社の事業内容を教えてください。

世界初「AIセールス」機能を搭載したインテントセールスSaaS「Sales Marker」を開発・提供しています。「Sales Marker」はリリースから1年9か月でARR 12億円に到達し、SaaS事業の目標とされる「T2D3」を超える可能性があるペースで成長しています。

「Sales Marker」は約500万件の法人データベースと企業のインテント(興味関心)データを組み合わせることにより、現在進行形で自社のサービスを求めている企業を発見し、キーマンに直接アプローチできるセールスインテリジェンスです。ユーザーの営業活動を「顧客起点」のインテントセールスにより、感謝される営業活動に変革します。

またSalesforceやHubSpotなどのSFA・CRM・MAツールとの連携により、シームレスな営業・マーケティングプロセスを実現しました。大手通信会社から金融機関、人材企業、成長スタートアップまで、300社を超える企業に導入されています。今後はAIセールス機能により、すべての企業の成長に貢献していきます。

── 2024年に波がくるスタートアップのテックトレンドを教えてください。

インテントセールス、つまりインテントデータを活用した顧客起点の営業活動がトレンドになると考えています。米国では62%の企業が顧客のインテント(興味・関心)データを活用しているとされており、そのトレンドは日本国内にも波及しています。実際に「Sales Marker」を導入した成長スタートアップは、商談数200%を達成。大手企業も積極的にインテントセールスを展開しています。

また昨今、企業は慢性的な人手不足に陥っており、従業員が非コア業務によりやりがいを喪失したり、成果がでないことでモチベーションを失ったりすることによる、離職率の増加を避けたいと考えています。効率的かつ確度の高いインテントセールスは、そうした人的資本経営の一助にもなり得ます。

── 挙げていただいたトレンドにより、どんな社会の変化が起こるか。また、どのような人やスキルが重視されるようになるかを教えてください。

「Sales Marker」とインテントセールスは、日本の素晴らしい技術が世界に届くことを推進します。また「営業」をやりがいのある職種に変革し、エンゲージメントの向上や離職率の低下など、営業パーソンのウェルビーイングも実現していきます。

2021年の日本労働調査組合の調査で、営業パーソンの80%が退職を検討している結果が注目を集めました。その一因として、昔ながらの手当たり次第の営業により成果が得られないだけでなく、顧客との関係悪化によりモチベーションが継続しないことがあると考えています。

インテントセールスは、顧客ニーズを捉え、適切なタイミングに最適な手段でアプローチすることで、成果につながりやすい営業手法です。従来は、一部のトップセールスパーソン特有のスキルでしたが、「Sales Marker」はどんな営業パーソンでもインテントセールスを可能にするサービスです。

「AIで採用が効率化する一方、ディープフェイクによる巧妙な攻撃への対策ニーズが高まる」Newond CEO & Founder 小磯純奈氏

── 御社の事業内容を教えてください。

アメリカでレイオフ(一時的な解雇)シーンにおける、バックオフィス業務と再就職を支援するソフトウェア兼コンシェルジュサービス「Newond」を開発しています。もともと日本でXR業界に特化した採用マッチング支援をしていました。しかし、2022年前後の世界的な景気悪化に伴い、XR業界からレイオフされた求職者の就職相談を受けるうちに、レイオフの仕組み自体に課題があると感じ、2023年5月にNewond, Incを設立しました。

設立後は、元Y Combinator(以下、YC)のパートナーであるダニエル・グロス氏が立ち上げたグローバルアクセラレーター「Pioneer」で、50か国・250人以上の起業家の中から2位にランクイン。また、北米の大規模カンファレンス「Collision」への出展や、YC・a16zが支援するbuildspaceのアクセラレーターにも約15000件の応募の中から選抜されるなど、実績を積み重ねています。

メンバーには、アドバイザーとして1000名以上のレイオフに携わってきた人事のトップ層や人材企業の経営陣などが参画しています。

── 2024年に波がくるスタートアップのテックトレンドを教えてください。

まず、人事業務を効率化するAI技術が伸びると予想しています。昨年は、LinkedInやIndeedなどがAIを活用した新機能やプラットフォームをリリース。また、OpenAIによりエージェントのCSサポートの生産性が14%向上したというニュースもありました。

たとえば今まで手動だった候補者の選定やダイレクトリクルーティング、フォローなどの業務がすでにAIで対応可能です。今後はあらゆるHRサービスに、AIが搭載される世界が訪れると思います。

つぎにディープフェイクからの防衛サービスも成長すると予想しています。背景にはリモートワークが普及し、非対面で採用から業務遂行まで可能になったことで、詐欺師がディープフェイクを用いて求職者になりすます事例が増加していることがあります。実際にCOVID-19が原因で発生したサイバー犯罪は、4600万ドル以上の損害をもたらしたとされています。

今後はAIを業務に活用する一方で、AIを悪用した巧妙な攻撃から会社や従業員、顧客をどのように守るかが重要となり、防衛・セキュリティサービスの技術開発が推進されると予想します。

── 挙げていただいたトレンドにより、どんな社会の変化が起こるか。また、どのような人やスキルが重視されるようになるかを教えてください。

企業は優秀な従業員を惹きつけ、維持する仕組みを醸成する必要性を再認識していくと考えています。なぜならアメリカ市場では、ネガティブな雇用環境が経済にマイナスの影響をもたらしていたためです。今後は日本企業のレイオフを前提としない人事制度を、参考にする海外企業が増加するかもしれません。

一方で労働者は、国や世代を越えた競争が加速していることから、どのように企業やその先の顧客に必要とされるかを真剣に考えなければなりません。また、働き方が多様化する中で、自走力やスキルの醸成もますます重要になると考えています。

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