スペースマーケット, 重松氏
2020.07.10 Interview

2019年上場を最初に決意ーースペースマーケットが乗り越えた5つの壁

2019年の終わり、国内シェア経済を牽引するスペースマーケットが東証マザーズに上場した。重松大輔氏は、スタートアップしたその時から2020年までの上場を決意してこの事業に臨んだという。前職での上場経験を元に彼は何を選択し、何をやらなかったのか。その意思決定のプロセスに6つの質問で迫る。

Q1:シェア経済の中、なぜ「スペース市場」を選んだのか

“エンジニアじゃない僕がやる上で、営業ハードルがあるものが自分に向いているだろうなと。まず不動産オーナーを説得して登録してもらうのにはそこそこ営業ハードルがあるんじゃないかと考えたんです。”

 

やっぱりこう、リアルが好きなんですよね。前職がイベントなどの写真をネットで販売する、リアルとバーチャルの掛け合わせみたいなビジネスだったので、そういうのをやりたいなと。

 

あと、マーケットがデカいところで勝負したかったので、不動産市場は非常に大きいですよね。さらにここ、5年〜10年でやってくる大きな技術トレンドを考えた時、アメリカをみたらやはりAirbnbなどが急成長してましたから、この不動産のシェアリングは確実にやってくるし、不可逆な流れになる。

多くが同じようなことを考える中、ここで勝てると信じた理由は?

 

参入障壁の考え方ですね。エンジニアじゃない僕がやる上で、営業ハードルがあるものが自分に向いているだろうなと。プラットフォームって「ニワトリ・タマゴ」じゃないですか。まず不動産オーナーを説得して登録してもらうのにはそこそこ営業ハードルがあるんじゃないかと考えたんです。

 

ーー重松氏にもう一つ、スペースマーケット以外に残った最後のアイデアを聞いてみたところ、意外にも、幼稚園や保育園のオンライン化サービスを考えていたのだそうだ。

 

子どもたちの個人情報ってこれから取得がどんどん厳しくなるだろうなと考えていたんです。当時は幼稚園とか保育園って連絡帳がまだ紙のままだったり、保育代も茶封筒でやりとりしていたり。これは絶対オンライン化できるだろうと考えてました。ここをサービス化できれば、蓄積される子どもたちのデータは大きいだろうし、サブスクリプションのようなモデルも積み上げが効きます。

 

あと、前職でやはり子どもたちの写真を扱ってましたから、想像以上に営業ハードルが高いんですよね。なので、ここは行けるんじゃないかなと。

Q2:創業期に「やらなかった」こと

“気をつけていたのがやっぱりカルチャーで、初期の10人ぐらいの時におおよそ決まってくるんですよね。特に最初って誰でもいいから手伝って欲しいという意識ってあると思うんです。でもこれは絶対やめようと。”

 

本当に最初の最初は共同創業者を探すところがあって、私は完全にエンジニアのバックグラウンドはありませんから、ゴリゴリとプロダクトを作った経験のある人を探すっていうのが最初にやったことですね。(執行役員CINOの)鈴木(真一郎)がそうなんですが、 まさに妻(※)が昔に投資をした先という縁があって。彼じゃないとプロダクトが成立していなかったのでそれは非常に大きかったですね。再現性は難しいですが(笑。

 

※重松氏の妻、佐藤真希子さんは現在、iSGSのマネージング・ディレクターで、当時はサイバーエージェント・ベンチャーズで投資を手掛けていた人物

 

準備期間が2カ月ぐらいあったんですが、私は企画書を作ってひたすらスペースを集めて回ってました。

 

創業に近い経験で2度目のスタートアップ、出だしでイメージしていたものは

 

資金調達するところまでを描いて立ち上げていましたね。どうすれば一番良い条件で資金調達できるかイメージして、まずプロダクト出して話題にし、その後、ピッチコンテストで優勝する、みたいな。あと、上場については絶対にオリンピック(2020年)までにやると、創業した当時からずっと考えてました。

 

逆にやらなかった、やらないと決めたことは

 

前職(フォトクリエイト)での経験はやはりめちゃくちゃ活きてて、特に組織ですね。私は15番目ぐらいに入ったんですけど、その後、50人、120人と増えていくわけです。それぞれのフェーズっていうのがあって、必要とされる人たちもちょっとずつ変わっていくじゃないですか。最初はなんでもやるゼネラリスト、資金調達などが進んできたら特定のプロフェッショナルや、他の組織で経験を積んだ人たちが入ってきて。こういった状況を経験済みだったことは大きかったです。

 

それで、気をつけていたのがやっぱりカルチャーで、初期の10人ぐらいの時におおよそ決まってくるんですよね。特に最初って誰でもいいから手伝って欲しいという意識ってあると思うんです。でもこれは絶対やめようと。

 

だから採用についても、いきなり入社、ではなく、社会人インターンじゃないですが、興味ある方に手伝ってもらって、お見合い期間っていうんですかね。3カ月とか半年ぐらい手伝ってもらってから、資金調達のタイミングなどにお声がけする。これは結果的にやっぱりよかったですね。

Q3:投資家をどう選ぶ

“チマチマ駆け引きしたりせず、プロダクトをデッカくして、沢山の方に喜んでもらうものを作るっていうのが大前提ですよね。”

 

特にシードとかアーリーステージの時はやはり人ですね。しっかりサポートしてくれるかどうか。当然、バリュエーションの考え方もあるのですが、トラックレコードじゃないですけど、箔が付くというのでしょうか、こういったブランド価値もあると思っています。

 

投資家との付き合い方、特に距離感はどう考えてましたか

 

彼らももちろん(いつかは株を売却しなければならない)そういう生き物なので。ただ、まずはその果実を大きくしなければ話にならないじゃないですか。チマチマ駆け引きしたりせず、プロダクトをデッカくして、沢山の方に喜んでもらうものを作るっていうのが大前提ですよね。

 

まあ、最後はこう、気持ちよく出て行っていただけるようにする(笑。彼らも別に気前のいい人たちじゃないわけで、しっかりとリターンで商売してるわけですから。期限もありますし、それをちゃんと意識してお付き合いする必要があるわけです。起業家、経営者としてはちゃんと結果でお返しするというのも筋じゃないですかね。

Q4:撤退基準

“撤退するっていう頭はなかったですね(笑。まあ、キャッシュが尽きて、投資が付かなかったら辞めざるをえないわけです。今だから言えますが、シリーズBラウンドは結構苦労したんですよ。”

 

ちょっと話を変えて間違いなくイケると思ったタイミングっていつでしたか

 

まず最初にいけるなと思ったのはサービス開始して半年後のハロウィン。大学生とかがレンタルスペースを借りてくれるようになったんですよ。それまでは正直、あまり鳴かず飛ばずだったんですけど、そこからですね。ふわっと上がるようになって。

 

ちなみに最初の立ち上げ時期、ビジネス用途で考えてたんですよ。Airbnbのビジネス版。だから最初に入ったスペースも例えば映画館とか野球場のように見栄えするものが多くて。あと、小さい個人宅はリーチがそもそも難しいですよね。

 

そこからは角度が変わるようなことはないにしても、着実に積み上がっていって、さらにそこからサービス開始後3年目ぐらいですかね。いろいろな機能を実装したんです。インスタントに物件を予約できるボタンやポイントのようなサービスですね。その辺が整備されると劇的に伸びていきました。

 

ちなみに撤退基準って決めてましたか?

 

撤退するっていう頭はなかったですね(笑。まあ、キャッシュが尽きて、投資が付かなかったら辞めざるをえないわけです。今だから言えますが、シリーズBラウンドは結構苦労したんですよ。当時は経理部長すらいなくて、私が回ってたんですね。もちろん数字も伸びてるんですが、月次で1000万円が1200万円になるとかちょっとインパクトが足りない。最終的にはなんとか出資してもらうことができましたが、なかなか思い出したくない時期ですね(苦笑。

Q5:重要指標はどうメンテナンスする

“さらに成長するとレンタルスペースの運用代行の事業者(企業)のような方々が増えてきてその方々の満足度はどうなんだ、というようにまた見るべき数字に変化が出てくる。こういった数字をそうですね、四半期だったり半年で自然と見直してきました。”

 

上場時の開示資料から、KPIはGMV(流通総額)とスペース数とされてました。これは最初から決まってましたか

 

もちろんそれ以外の細かい指標もあるんですが、大きな数字は最初から変わってないですね。ただ、初期の頃ってすごく稼働しているスペースもあれば、そうでないものもあってそういう傾向というのかな、それが見えてきたのはやはりシリーズBラウンドあたりかな。

 

チームで数字を追いかけるモチベーションや仕組み

 

Slackなどで毎日数字のデータが配信されてくるんですけど、それをチームでしっかり評価したりとか、毎月の社員会で進捗を発表したり。上場後は重要なデータは開示できないですけど、未上場であればタイムリーに共有したり、一時期は大きな画面で表示したりしてましたね。ベタですが、可視化はやはり大切です。

 

チームでの数字の追いかけ方ですが、ニワトリ・タマゴのロジックでいくと、やっぱりニワトリ(※スペース)を連れてこないとビジネスとして成り立たないですよね。ただ、何が稼働するかなんてわからないから、とにかく集めてこようよ、というのが初期。

 

で、徐々に成長してくると、こういうスペースが稼働するよね、実はこのスペースはあまり入らなかったねという「稼働率」が見えてきたんです。さらに成長すると運用代行の企業のような方々が増えてきてその方々の満足度はどうなんだ、というようにまた見るべき数字に変化が出てくる。こういった数字をそうですね、四半期だったり半年で自然と見直してきました。

Q6:上場直前期に起こること

“これまで自由にやってきたのに、勤怠管理しなきゃいけないとか、こう、大人の会社になるっていうんでしょうか。これ嫌な人もいるわけです。上場前にも関わらず、やっぱりどうしても合わない人が出てきてしまったり。仕組みが変わってしまいますからね。”

 

上場直前期に特に留意して実行したことは

 

上場後を見据えてのアクションとして、事業会社に多く入ってもらったことですね。あと、上場後って色々大きく踏み込んだマーケティングなどはやりづらいんですね。そこで2億円ほどを投じて初めてのテレビCMを打ったりしました。今までなかなかやってこなかったようなことを実験も含めてテストしてみた感じですね。あとは社内規定を揃えたり、ガバナンスなど、上場企業として必要な対応などは当然やりました。

 

ただ、これまで自由にやってきたのに、勤怠管理しなきゃいけないとか、こう、大人の会社になるっていうんでしょうか。これ嫌な人もいるわけです。上場前にも関わらず、やっぱりどうしても合わない人が出てきてしまったり。仕組みが変わってしまいますからね。

 

実はオプションを理解していない人も一定数いるんです。もちろん説明はしますよ。けど、ここが難しいところなんです。行使できる時期も言い切れませんし、あと、オプションでしばりすぎると、それありきみたいになっちゃうのも嫌でしたから。

 

なので、途中から(オプションについては)コミュニケーションは変えましたね。それよりも目の前の事業に向き合って、自分を成長させることができれば、結果的にそういうインセンティブも手に入るし、ホストやゲスト、社会にも還元させることができるよ、と。

 

ありがとうございました。

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